メインスタッフ: 2014年5月アーカイブ

「道頓堀 太郎寄席」、弥生三月は「松の会」一本でおました。

その代りといっては何でおますが、「松の会」やけれども「三席」の会になっておりましてん。文三師匠は「三席」の会にご熱心なのでおます。

 

今回のゲストには、一年ぶりに講談の旭堂南斗がおでましでおました。

文三師匠は、ちょいちょいゲストに講談師さんを招きはりますが、ふだんなかなか講談を聴く機会もおませんので、よろしおますな。

「太郎寄席」にも、南青はんと南斗はんと、お若いところがお出ましでおますが、明るうてよう笑いをとりはる南青はんに対して、ちょっと静かな感じの南斗はんと、個性がそれぞれでよろしおますな。文三師匠は、南斗はんは「ちょうどええ陰気さ」なんておっしゃっておりますが、落語も講談もいろいろな色や空気あるのがよろしいなと思うておるのでおます。

 

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さて、その南斗はんは「将棋大名」という講談でおました。下手でわがままな将棋を指しては家来を悩ませる殿さんの話でおます。最後に家来の三太夫が殿さまを追い詰めてゆくところが面白いのでおます。

これは落語にもなっておりますが、同じお話でも、講談と落語とでは違う楽しみがおますな。

いっぺん、「太郎寄席」で講談の会もやってみたいなと思うておりますねん。いつもと反対に、ゲストに落語、という趣向でどないでっしゃろか。

 

さて、文三師匠の三席でおます。

最初は「前座」でおますさかい、羽織なしの前座姿でおでましでした。

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五代文枝師匠へ入門しはったときのエピソードでマクラが始まります。今日のこの最初の衣装は、はじめて文枝師匠に買ってもろうた着物やということでおました。

二つ上の兄弟子さんである文華師匠の年季が明けたばっかりということで、こちらのお供もようしはったというお話もありました。昔は文華師匠はえろう酒癖がわるかったそうでおます。文三師匠は召し上がらないので、文華師匠のお守りをすることになっては、よう困ってはったそうでおます。

文華師匠は「太郎寄席」でもおなじみで、毎度すばらしい芸を見せていただきますが、若い頃の文三師匠にはお気の毒なけど、やっぱりええ芸人さんというのは、どこか破綻してるもんなんでおまっしゃろか。そういえば、桂ざこば師匠も若い頃、酔っぱらって朝起きたら太左衛門橋の上で寝ておったとか、ご自分でもようマクラのネタにしてはります。

 

さて、最初のお噺は「十徳」でおます。羽織ににた「十徳」という着物の名前の言われを覚えて、それを自慢しようというアホな男の噺でおます。しったかぶりをする阿呆の噺というのが落語にはちょいちょいおますな。そういうのは噺じたいがようでけておりまして、前座向けなんでおまっしゃろな。そのかわり、いっぺん聴いたことがあったらタネはバレるもんでおます。たいていはまだあんまり上手でない前座はんがやっておって、しかも噺のタネがバレておるような噺こそ、こういうベテランの手にかかるとたちまち見違えるのでおます。「三席」ならではの楽しみでおます。

 

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次のお噺は「湯屋番」でおます。

これは東京落語でようかかるお噺でおまっしゃろか。わては初めておました。

道楽して勘当された若旦那が風呂屋へ奉公に行く噺でおます。無理やり番台へ上がって、なにやら一人芝居みたいなことをやってワヤになる噺でおます。

阿呆が一人と、それを冷めた目で眺める客の描写でおます。

ちょっと『男はつらいよ』の映画の、割合古い方、森川信が初代「おいちゃん」をしてた時の、「・・・バカだねぇ」ちゅうのを思い出しますな。そういえば、文三師匠は最近『男はつらいよ』に凝ってはるのやそうでおます。わても好きでおまっせ。

 

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トリは「天神山」でおました。文三師匠がお得意な噺のひとつでおますな。

このお噺は、「へんちきの源助」というのが、おまるに弁当を入れてしびんに酒を詰めて、花見ならぬ「墓見」に行くところからはじまります。夜中に、お墓の主の女子はんが幽霊になって訪ねてきて嫁入りするということになって、隣に住んでおる「胴乱の安兵衛」というのが真似して出かけて、こっちは全然違う成り行きで狐が嫁入りしてくるという噺でおます。

文三師匠にお聞きしたところでは、このお噺は前半と後半とで主人公がまったく別々になっているので、噺がばらばらにならんように、「はて、源助はどないなったのかな」と思わせんように進めるのが難しいということでおますねん。

前半は「骨釣り」、東京で言う「野ざらし」にも似ておりますが、「天神山」のほうはその後の後半の方が見せ所でおます。とはいうても、どちらの筋も、本来的に笑い話やのうて、奇譚というべきでおまっしゃろな。ほんで、ちょっとほろっとさせるのでおます。

「へんちきの源助」という男も世をすねたようなけど、憎めん。「胴乱の安兵衛」も阿呆なようでたいへん人がええ。というところを描写するのも難しそうでおます。

桜が咲き乱れる春の日の真昼の夢のような、おだやかな、ええ噺でおます。

ついでに、「へんちきの源助」が墓見に持ってゆく花見弁当も美味しそうなんでおます。鰆(さわら)の生寿司(きずし)、玉子の巻焼き、「巻焼き」というのは玉子焼きのことでおます、それに烏賊の鹿の子焼き・・・。ここを聴くたんびに、わても弁当もって花見に行きとうなりますねん。

「生喬三席」につづきまして、二月如月の「松の会」は桂南天師匠でおます。

 

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 まず、前座は桂弥太郎はん、桂吉弥師匠のお弟子さんでおます。吉弥師匠はわてもご縁がありまして、いっぺんだけNHKの仕事でご一緒させてもろうとことがおますねん。まだ「くいだおれ太郎プロジェクト」がでけたばっかりの頃でおました。

 弥太郎はんはまだ五年目やけれども、ちょっと歳いってからの入門やさかい、落ち着いてはりますねん。今日の噺は「寿限無」でおましたが、歯切れのええ、キレのええお噺でおました。米朝事務所の伝統はまだまだ生きてますのやなあ。

 

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 ゲストは桂佐ん吉はんでおます。佐ん吉はんは、前に文華師匠のゲストでもお出ましでおました。今日は「稽古屋」でおました。

 お稽古ちゅうのは落語の噺によう出てくるようでおますが、「稽古屋」のお稽古は踊りのお稽古でおます。「梅ェは、咲いたか、さくゥらは、まだかいィナ」ちゅうのが出てくるやつでおますな。この噺はお囃子さんも大活躍でおます。今日のお囃子は公美子はんでおますな。

 東京落語に慣れた方には、上方の、鳴り物が入る落語は嫌やとおっしゃる方もおられるようでおますが、生で入るとええもんでおます。「稽古屋」はお囃子さんが大活躍しはるのでおますが、高座の師匠と息を合わせるところが、芸でおますな。気分のええお噺でおました。

 

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 さて、南天師匠はまず「かぜうどん」でおました。東京では「うどんや」という噺でおますが、これも三代目柳家小さん師匠が東京へ移しはって、五代目が完成させはったちゅうことでおます。

 いろんなやりようがおますようですな。今日のは、博打うちがうどん十杯注文する伏線もはいっておりました。若い衆のキレのええ、テンポのええ噺が気持ちよろしおますな。

 しまいのところは、うどんを食べるしぐさだけで何分か演りはりました。寒い冬の夜は、おうどんが美味しおますな。このうどん屋さんの汁は、鰹昆布出汁なのやそうでおます。おうどんの出汁としては上品でおますが、わても鰹昆布出汁のおうどん、大好物なのでおます。

 

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 さて、今日は中入りなしの4席でおました。というのも、中入りを入れると中トリをどない設定するかがなかなか難しいのやそうでおます。なるほど、林家花丸師匠も中入りなしでやりはることがおましたな。

 ほんで、大トリは「幸助餅」でおました。関取の「いかづち」に入れ込んで身代をつぶした米屋の旦那さんの噺でおます。

 これは前に、花丸師匠もかけはった噺でおまして、あのときはほんまにびっくりしましたな。この噺は「いかづち」が豹変するところが見どころのひとつなのでおますが、花丸ワールドは見事な豹変ぶりでおました。

 個性の違う南天師匠はどないやりはるのやと思うて聴いておりますと、やっぱりそこここ、演出が違っておるのでおますな。主役の幸助はんの性格の設定やら、脇役の伯父さんの設定やら、こまごまとしたところで違うて、こっちはすっかり南天ワールドになっておるのでおました。「太郎寄席」の師匠方は、それぞれにお互いのやりようをよう研究してはるようでおますな。

 それにしても、南天師匠は今日はええ声を出してはりましたな。ますます脂が乗ってきてはるようでおます。

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