久しぶりに、香住へ松葉ガニの初セリへ行ってまいりましてん。
香住いうたら兵庫県香美町でおますな。昔は城崎郡香住町というておったのが、合併で香美町になりましてん。わてとこの「大阪名物くいだおれ」の創業者や、女将さんの出身地でおます。
5年ほど前に先代のお墓参り兼ねて、松葉ガニの初セリを観にお邪魔したことがおまして、今回は二へん目でおます。前にいてはったセリ人さんもわてのことを覚えてくれてはりました。
今年はセリ人さんも代替わりで、今年から、ということは今日から、若いセリ人さんがデビューしはるのやそうな。
松葉ガニというのは、ズワイガニのことでおます。福井県では越前ガニ、丹後では間人(たいざ)ガニと言いますが、但馬では松葉ガニといいますねん。よう似たベニズワイガニよりも値段が高うて、漁期も短うおますのやナ。
松葉ガニの解禁日はだいたい毎年11月の6日という日になっておるようでおます。11月6日の午前零時が解禁やさかい、漁船がずっと海の上で待っておって、零時になると同時にカニを獲るためのカゴを下ろすのやそうな。
ほんで、初日はそのまま半日ほど漁をやって、お昼くらいまでに漁港へ帰ってきますねん。
漁港へ帰ってきたら、大きさごとに分けて、脚の欠けとるのも分けて、締めてある分はセリ場へ並べて、生かしておる分は水槽へ入れて並べますねん。
セリは港によって時間が違うのでおますが、この香住港ではお昼の2時からでおました。お隣の柴山ともっと東の方の津居山、城崎でおますな、では1時からということでおます。
セリ人というのは、商品をセリにかける人のことでおます。美術品のオークションでハンマーもって台に立っておる人と同じことですな。ほんで、セリに参加する人のことを「売買参加人」、略して「売参」(ばいさん)と呼びます。
セリ人さんはセリの前に並べてあるカニを見てあるいて、だいたいどのあたりの値段になるか下調べをしはります。売参の人も、下見をしてほしいものに目星をつけはりますねん。
いよいよ今年最初のセリが始まりましてん。
見渡す限りカニ、カニ、カニでおます。大きいのやら小さいのやら。うんと小さいのは「セコガニ」いうてズワイガニの雌でおます。これを端から端まで競って歩きますねん。セリ人さんは声を出し通しでえらい仕事でおますが、売参さんも大変でおます。セリでは指で入札しますねんな。わてらにはなんのこっちゃさっぱりわかりまへんのやけど。
香住では入札はいっぺんで、値段が同じやとジャンケンしますねん。ジャンケンの強い人やら弱い人やらおますのやけど、さっき弱かった人が今度は強うなったり、その反対やったり、いろいろでおます。
わてもえんえんとセリについて歩いておりましたが、2時にはじまって終わったのが4時でおました。えらいことでおます。大阪の中央市場ではいっぺんにいろんな品物のセリをやりますのやが、30分くらいで終わりますねん。ここはカニだけやさかいいっぺんにあちこちでちゅうわけにゆきませんねんな。
ほんでも、ベテランの方のセリ人さんがおっしゃるには、「今日は初めてやったから2時間かかったけど、わしがやっとったときは1時間半で済んだ」ということでおます。
そやけど、今日は初日で大きな船が入ってないさかいまだ少ない方なのやそうな。
明日からは毎朝6時半からでおます。大きな船も入るさかい、3時間くらいかかるのやそうでおます。
えらいことでおます。売参は資格が要るのやけど、香住港では毎日30人くらいが参加しはるのやそうな。大阪の市場でも名前をみかける業者さんもようけいてはりますな。
えらいもんでおました。