太郎寄席 9月の松の会

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長月9月の松の会は、桂南天師匠の会でおました。

今月と来月は、寄席の組み替えをしておりまして、「道頓堀 太郎寄席」は松の会の一回ずつになりますねん。

 

本日のゲストは、桂雀五郎(じゃくごろう)はんでおます。

雀五郎はんもようお出ましいただいておりまして、これで4回目か5回目でおます。すっかりおなじみでおますな。

今回のお噺は「青菜」でおました。おっちょこちょいの大工が、旦那さんにごちそうになって、奥さんとのやりとりに感心して、うちへ帰ってマネする噺でおます。

雀五郎さんの見せ所は、独特の「間」やないかと思いますねん。黙って、茫然とするときの間、ごくりとつばを飲み込む、その「間」が独特でおまして、毎回楽しみにしておりますねん。

今日は、噺の最初は妙に間が悪うて、間がつまってはりまして、ちょっとわて心配になったのでおます。噺がだんだん進むにつれて、いつもの間が出てきて、安心でおましてん。やっぱり、雀五郎はんはあの「間」を見んことには済みませんな。

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南天師匠は、まずは「夢八」でおました。昼ひなかから、うっかりすると寝込んでしまって妙な夢をみて、周りがえらい難儀するちゅう噺でおます。こういう、ありそうでありえへん噺、ほんまかいな、ちゅう噺は南天師匠のお得意でおますなア。

お化けの噺がお得意でおますが、これも似たようなもんでおまっしゃろか。次はどないなるねん、とハラハラさせられながら、客席は笑うておるのでおます。なんや、そのどうにもけったいなような、情けないような、その味がよろしおますな。

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今日は、中入りなしでトントンと行きまして、南天師匠の大トリは「子はかすがい」でおました。

米朝一門で「子はかすがい」いうたら、なんというてもざこば師匠の十八番でおまっせ。ざこば師匠の「子はかすがい」は、噺なんやら地でやってはるのやらわからんほど、うまいことやりはりますねん。

さあ、南天ワールドではどないなるんやろかと思うておったら、ざこば師匠とは違うやりようでおましてん。

「子はかすがい」、東京では「子別れ」という噺でおますが、これには、別れた夫婦のうち、どっちに子供がついて行くかというバリエーションがあるのでおます。ざこば師匠のは、ヨメさんのほうに子供がついていって、ある時、もとのお父ちゃんに出くわすという筋でおます。

南天師匠がやりはったのは、子供がお父ちゃんの方へ残るという筋でおます。お噺は、別れたお母ちゃんが、昔世話になったお姐さんのところを訪ねてゆくところから始まるのでおます。

どっちの噺でも、子供が残った方が生活に苦労しているということになっておりまして、ざこば師匠のやりはる筋では、独りになったお父ちゃんは腕のええ大工で稼ぎもええということになっておりますが、今日のお話では反対に、独りになったお母ちゃんがええ仕事先が見つかってよう稼いでおるということになっております。

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それぞれに、お父ちゃんやらお母ちゃんやらの描写が違うてまいりますのやな。脇役もちょっと違うてまいります。

あとで、南天師匠にそのことをお聞きしましたら、「子はかすがい」のもとの噺は今日演りはった方の筋なのやそうでおます。今はあんまりやる人がないけど、師匠はこっちのほうがしっくりするように思うので、こっちでやってますのやということでおました。それに、子供がお母ちゃんの方について出てゆく筋の方は、なんというてもざこば師匠にはとてもかなわんさかい、同じやり方ではよう演りませんということでおます。

 

気楽な噺のようでおますが、なかなか難しいもんでおますな。

次回の「道頓堀 太郎寄席」は神無月10月の30日(水)、笑福亭生喬師匠の「松の会」でおます。予告は「らくだ」でおます。

どうぞ、お運びのほど。