道頓堀 太郎寄席 水無月六月の会

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 今年はえらい梅雨入りが早うおましたな。

 狸さんをお迎えに行くのに、梅雨入り前にしよ、と思うて段取りをしておったのにさっさと梅雨入りしてしまいましてん。

 太郎寄席の方は、最初から梅雨時のつもりでおまして、予定どおりでおました。そやからどないということでもおまへんのやけど・・・

 

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 中堅の二人会でやっております「藍の会」の方は、今月は笑福亭由瓶はんと桂紅雀はんでおました。今回は紅雀はんの「佐々木裁き」が光っておりましたな。紅雀はんは声がよろしおますな。今日のお話はテンポもええし、お得意な噺なでおまっしゃろか。

 「佐々木裁き」というのは、町奉行のお裁きをマネして遊んでおる子供の噺なんでおます。大阪の名奉行・佐々木信濃守がそれを見つけて、その子供を呼び出してみたところが、なかなか頭の良い子供でやりこめられるという噺なんでおます。きっと、紅雀はんも子供のころはこういうナマイキな子供やったのやおまへんか、と思わせるのでおました。

 

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 「松の会」の方は、桂文華師匠の会でおました。

 文華師匠、ほんまに面白うおますな。まず、噺がかっちりしてはりますねん。ぴしっとしてはるのやけど、それだけでもおまへんねん。あほらしいならあほらしいなと、しつこいならしつこいな、とそないお客さんが思うてはるやろな、というところでうまいこと「気」を抜きはりますねん。噺の世界も、こっち側の現実の世界も、自由自在なんでおます。

 その文華師匠の今回の噺は、「遊山船」と「皿屋敷」でおました。

 

 「遊山船」というのは、大川に浮かべた遊山の船、屋形船みたいな遊びの船ですな、それを橋の上から涼みがてらに見物する噺でおます。ものを言うのは二人だけなのやけど、そこには船遊びをする旦那さんやらタイコ持ちやら芸者やら、いろいろ出てきて賑やかなんでおます。昔の大坂の舟遊びというのはこういうもんなのやな、ちゅう噺でおます。

 他人が船遊びをしているのを橋の上から見てああやこうや言うて、笑うたり残念がったりするちゅうのは、ほんまにあほらしいことなんでおますが、それをあほらしゅうなく見せて笑わすのは、なかなかに難しいことなんと違うやろかと思いますねん。

 そやけど、船に乗るもんがおって、それをまた見物するもんがおる、というのは大阪の夏の風物詩でおますのやな。今でも、天神さんやら難波八阪さんの船渡御はそういうことをやっておりますな。

 

 「皿屋敷」はあの怪談をもとにした噺でおます。

 怪談は「番町皿屋敷」として知られていると思いますのやが、上方落語の噺は「播州皿屋敷」というて、姫路が舞台なんでおます。この怪談は播州姫路でおこった事件がもとになっているとも言われておりまして、舞台は姫路なんでおます。

 お菊はんというのは、やっぱりベッピンさんやったのでおまっしゃろな。ベッピンは幽霊になったかてベッピンに違いないいうて、若いもんが見物に行ったら、えらい評判になるという噺なんでおます。あほらしいけど、世の中そんなもんなんでおまっしゃろな。わても観に行ってみたいもんでおます。

 

 落語というのは季節感がたっぷりでよろしおますな。