道頓堀太郎寄席 五月の松の会と六月の藍の会

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「セツデン」で太鼓をお休みしておったからというわけではおまへんのやけど、わての「つぶやき」、ちょっとご無沙汰してしまいましてん。
「太郎寄席」の五月の松の会と六月の藍の会、ちょっとはしょってご報告いたしますねん。

五月の松の会は、おなじみ林家花丸はんの会でおました。お噺はおなじみ、古典の「阿弥陀池」と、大トリに小佐田定雄はんの「お父っつぁんは魔法使い」というお噺でおました。
この「お父っつぁんは魔法使い」というのはけったいなお噺でおまして、よぼよぼのご隠居のお爺さんが、実は魔法使いであったという、なんとも荒唐無稽な設定のお噺なんでおます。

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往年の人気テレビドラマ『奥様は魔女』を下敷きにしたり、そんなわけがあるかいな、というアホらしいお噺でおますが、そういう荒唐無稽な、そんなアホな、ちゅう噺は、この花丸はんという方はお上手なんですなあ。
よぼよぼの、このお爺さんほんまに魔法使いなんやろか、ただボケてはるだけと違うやろか、と思わせながら、やっぱりほんまに魔法使いやったという、ありもせんような噺を、いかにもありそうに思わせるところは名人芸でおます。
ほんまは花丸はんご本人が魔法使いなのやないやろか、と、わてこない思うておりますねん。

六月の藍の会は、先月の会にゲストでご出演いただきました桂雀五郎はんの会でおました。お噺は古典の「看板の一(ピン)」、「質屋蔵」というスタンダードでおます。
雀五郎はんというお方はまだ三十代の半ばでおますが、妙に落ち着いた噺家はんでおまして、間の抜け具合が絶妙なんでおます。

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「看板の一」という噺では、老練の博打打ちが若い連中にせがまれて壺を振りますのやが、サイコロが壺からこぼれたと見せかけて、それは「看板や」というのでおます。若い連中は、オヤジさんがもうろくしたと思うて、その壺の外のサイコロ見て張るのやけど、ほんまのサイコロはやっぱり壺の中にあって、みんな巻き上げられるという筋でおます。
オヤジさん、もうろくしてはるんちゃうか、と見せるところやら、若い連中がだまされて唖然とするところやら、その「間」(ま)が実によろしいのでおますな。
「質屋蔵」は、質屋さんの蔵の中に預かった品物が夜な夜な出てきて相撲を取るという、夏向きのお噺でおますが、夜通し見張っておれといわれてお店(たな)の丁稚や番頭が困るのでおます。その雀五郎はんの困り方が、またユカイでおますねん。

このあたりの加減は、マイクも使わん、小さい「太郎寄席」ならではのお楽しみでおますねん。「太郎寄席」では毎回力の入ったお噺が続いておりますねんけれども、この小屋の小ささ、また通ってきてくださっているお客様の良さも、自慢できる落語会やと思うておりますねん。
どうぞ、今後とも「道頓堀 太郎寄席」ご贔屓にお願い申し奉りますねん。