わて、歌舞伎の舞台に立ちましてん

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 舞台に立った、いうても、役をもろうたわけやおまへんねん。大阪城の西の丸に小屋かけてやってはった、「平成中村座」の千秋楽に呼んでいただきましてん。

 中村勘三郎はんが勘九郎はんやった時代に「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」いうお芝居をはじめはって、そのときにわて、東京の劇場へ呼んでもろうて、ロビーで太鼓叩いておったという、そういうご縁がおますねん。そのあとも1、2へん、そないしてこのお芝居がかかったときに呼んでいただいておりましてん。

 今回は、勘三郎はんはご存知おまへんことでしてん。主催の関西テレビのプロデューサーはんが思いついて、サプライズの登場ですねん。お芝居の人は、おもしろいいたずらを考えはりますなあ。

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 日が暮れてから会場へ入りましてな。出演のみなさんにはわからんように、わてと女将さんと、おしまいの幕をやっている間にそうっと舞台の後ろにまわって、かくれておりましてん。舞台のうしろには大阪城が見えますねん。舞台のうしろの壁が開いたら、そこに大阪城が見えるという仕掛けでおますねん。ええ景色でおますけど、ちょっと寒うおましてん。

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 いよいよ、お芝居の幕が下りて、カーテンコールで、いっぺん幕が下りたあいだに、わてと女将さんと、出演のみなさんの後ろに、そうっと出てゆきましてん。

 ほんなら、やっぱりよう見えるもんですなあ。お客さんが「わあっ」と声をあげてくれはって、勘三郎はんやら、出演のみなさんが「なにごとか」と後ろを向いたところに、ぱあっと紙吹雪が散りましてん。千秋楽らしい、華やかな趣向ですなあ。

 ほんで、勘三郎はんに花束お渡ししたら、そのまま花道から客席へ下りて、ずっと花束もって歩いていてくれはりましてん。客席から花一輪ずつ出演者の皆さんに渡していってはったのやけど、橋之助はんがご自分の分をわてにくれはりましてん。

 女将さんも勘三郎はんのお芝居がお好きですねん。昔ながらの、誰でも楽しめる、素朴でええお芝居をしはるのや、いうて、いつも言うてはりますねん。この「平成中村座」も、大阪城の西の丸の、ふだんは芝生のところに仮設の小屋をかけてやってはりましてん。昔むかしの、ムシロをかけてお芝居をやっていた頃のような味わいがおますねん。大きな劇場と違うて、客席と舞台の距離が近い言うて、お客さんにもえらい好評やそうでおますねん。ニッポンの文化はよろしおますなあ。

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 わては何も役があったわけやないけれど、歌舞伎の蒼々たる大御所のみなさんとおんなじ檜舞台に上がらしてもろうて、わて、足が震えましてん。ほんまに光栄でおますなあ。ええ経験さしてもらいましてん。

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