わて、道頓堀へ帰ってくることになりましてん!
ほんで、今日は東京へそのお披露目の記者会見ですねん。

わても詳しいいきさつはよう知らんのやけど、なんでも、わての新しい仕事場は中座の跡のビルになる、いうこっちゃ。
むかし、道頓堀は日本でいちばん大きな芝居街でしてん。
大きな小屋、小さな小屋、ほんで小屋の席をとったりもする芝居茶屋もようけあって、そら、星の数ほどの小屋やら店やらがあった、っちゅうこっちゃ。
その中でも、浪花座、角座、朝日座、弁天座、ほんで、この中座の五つはひときわ大きうて、「道頓堀の五座」いうて、言われとりましてん。
そら、どれも大きな小屋でしてんで。
今は大きな建物は珍しうないけど、この五座の芝居小屋はどれも、黒い瓦の大屋根の、木造の建物でしてん。
鉄筋コンクリートやない、黒い瓦の大屋根いうたら、そら、立派なもんや。中座のビルは、わてがおった「くいだおれビル」の二軒となりやさかい、屋上からもよう見えましてん。
朝日座ははやいうちに映画館になりました。東映の映画館やな。
ほんで、弁天座は人形浄瑠璃の小屋になったのやけど、そのうち日本橋に国立の文楽劇場がでけたもんやさかい、のうなってしもた。
角座は20年以上むかしの漫才ブームのときにえらい賑おうたけど、ここも閉まってしまいましてん。
中座と浪花座は「くいだおれビル」の2軒東と2軒西やから、わてもとくにおなじみですねん。
浪花座は映画やら演芸がにぎやかでしたなあ。
「男はつらいよ」「釣りバカ日記」は毎年夏とお正月の恒例やったし、相の日(注・あいのひ、ふだんの日のことです)は漫才やら曲芸やら、なつかしい寄席の雰囲気で賑やかやった。
中座のほうは、これはずっとお芝居や。お正月になると、役者さんが小屋の前に出てきはって、鏡割りや。酒樽のふたを木槌で割って、街をゆくお客さんに振る舞い酒ですねん。
そんな芝居の街の真ん中で、わても毎日毎日鉦と太鼓をチンドン、チンドン鳴らしてたんや。
わての鉦太鼓もお囃子のうちや。気持ちよろしいもんでっせ。
そやけど、どっちも6、7年ほどまえに閉まってしまいましてん。ほんで、わてのおった「大阪名物くいだおれ」も店たたんでしもたし・・・
ほんでも、大阪の皆さんや、全国の皆さんが、ほんでやっぱり地元の道頓堀の皆さんも、「太郎ちゃん、早う道頓堀に帰っておいでよ」いうて言うてくれてますねん。
ほんまにありがたいこっちゃ。
けど、「大阪名物くいだおれ」は店たたんでしもてわての仕事場はないし、「くいだおれビル」もあちこち大きな修繕せんといかんようやし、わて、なかなか道頓堀には帰られへんなあ、思うてましてん。
社長さんと女将さんは「また太郎が道頓堀で働けるよう、努力する」いうて言うてはったけど、そない簡単なもんやおまへんが
な、と、わて思ってましてん。
そやから、こんどのお話はウルトラCみたいなもんや。「くいだおれ」ごと中座のビルに引っ越しする、いうことですな。くいだおれのビルが中座の跡地に復活する、いうこっちゃ。
社長さんと女将さんの話では、この中座のビルは最近東京の会社(注・東京建物不動産販売株式会社)、が買いはって、大きな改装を考えてはるとこなのやそうな。
この会社が100年以上続いてる古い会社で、「長い目で、長い時間をかけて、道頓堀を繁栄させたい」ということで、やりはるのやそうな。
社長さんも女将さんも、そこで意気投合しはって、こんどのわての引っ越しになった、いうことですねん。
わては、ともかくも道頓堀に帰ってこられる、いうことがうれしおますねん。
それも、由緒ある中座の場所やさかい、ありがたい話やなあ。
わて、道頓堀に帰って来たら、またいっしょけんめい、張り切って太鼓叩きまっせ!
わて、実はホームシックになってますねん。
やっぱり旅をしていると、道頓堀がなつかしおますねん。
そやけど女将さんは、
「かわいい子には旅させろ、言いますやろ。まだ中座のオープンまでは何ヶ月もあることやし、この子にはもうちょっと旅させとこう、思うてますねん」やて。